【超異分野学会東京2025】セッション『異分野と融合するゲルの科学、始まる』ダイジェスト

2025.12.29

ゲル科学をアップデートする『複素ゲル』の挑戦

東京大学大学院工学系研究科教授の酒井崇匡氏が2024年10月からスタートしたERATO酒井複素ゲルプロジェクトは、酒井氏らが開発したミクロな網目構造を精密制御できるテトラゲルから得られたゲルの理論の基盤をもとに、一般の高分子ゲルの包括的理解を目指している。それだけではなく、物質としてのゲル(具象ゲル)から得られるネットワーク性に関する知見などを抽象化したものを、抽象ゲルと捉え、ネットワーク性を持つ物質や集団の理解にまで広げようとしている。

この取り組みに参画する研究者も含めた議論が、2025年3月に開催された超異分野学会東京2025で行われた。そのセッションのダイジェストをお伝えする。

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登壇者
・酒井 崇匡 (東京大学大学院工学系研究科 教授)
・作道 直幸 (東京大学大学院工学系研究科 化学生命工学専攻 特任准教授/現・ZEN大学 准教授(兼務)
・増田 造 (東京大学大学院工学系研究科 バイオエンジニアリング専攻 助教(セッション実施時)/現・東京大学大学院工学系研究科 化学生命工学専攻 特任講師
・田中 信行 (理化学研究所 生命機能科学研究センター 上級技師)

モデレーター
・高橋 宏之(株式会社リバネス 知識創業研究センター センター長)
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ゲル科学の大型プロジェクト始動!

高橋:はい、みなさんこんにちは。
ゲルという言葉は、みなさんどこかでおそらく一度は聞いたことがありますよね。
今日は、登壇者の東京大学の酒井さんたちが仕掛けようとしている、皆さんが想像するゲルの世界観を変えうる新しいゲル研究の世界に、みなさんと一緒に踏み込んでいきたいと思います。

高橋:東京大学の酒井さん、東京大学の作道さん、東京大学の増田さん、理化学研究所の田中さんをお招きして、私、リバネスの高橋が進行役でお送りします。
よろしくお願いします。

高橋:では、ウォーミングアップでみなさんに質問をしていきたいと思います。

 

高橋:わたしが、ゲルについて調べて出してきたものを画面に並べているのですが、ゼリーや豆腐はゲルなんですね。あと、こんにゃく。
あとは、ソーセージやハム、たまごもですね。
今日の基調講演で酒井さんがおにぎりもゲルです、とおっしゃっていました。

高橋:私は初めて知ったのですが、シリカゲルはみなさん聞いたことあると思うんですけど、シリカゲルも広くはゲルの分類に入るようです。

高橋:みなさんの中ではゲルと言ったら、ゼリーや寒天あたりかなというイメージが強いと思いますが、それ以外のものでも結構いろんなものがゲルにくくられるというところをまずインプットさせてもらいました。

高橋:その上で、この中でどれがゲルに当たるのかというのを会場のみなさんと、登壇者の皆さんに手を挙げていただいて、認識の差がどのくらいあるのかを最初に知りたいなと思います。

 

高橋:まずラップですね。
ラップはゲルだと思われる方はどのくらいいらっしゃいますか?
1人、2人、、これは登壇者の方でも結構分かれますね。

高橋:では次、プラスチック容器。
これどうでしょう。
これはゲルだと思われる方いらっしゃいますか?
1人いらっしゃいますね。
後ろに2人。
これもまた登壇者の中でも分かれているので、あとで酒井先生に聞きたいと思います。

高橋:ではですね、クラゲはどうでしょう。
ここはかなりふにゃふにゃのものということもあるので、皆さんゲルという感じになってきました。では人間はどうでしょう。

高橋:はい、ウォーミングアップにお付き合いいただきありがとうございます。
先ほどラップはゲルか、という質問の時に酒井さんは手を挙げていただいていましたが、会場で回答が結構分かれていました。
ここで、酒井さんは何を持ってゲルというのを考えていらっしゃるのか、聞いてみたいと思います。

酒井:大体固まっていればゲルみたいなところもあるんですけど、網目状の構造を高分子が持っていればゲルといってもいいかなというところです。
今回は何でもかんでもゲルというコンテンツです。
今はすべてに挙げざるを得ない。(笑)
でも、そういったところまでゲルの考え方を広げていこうというような研究がこれから始まります。

高橋:はい、ありがとうございます。
今お話しいただいたところも含めて、酒井さんから自己紹介も兼ねてゲルってこんな感じだよ、ということを少しお話しいただけますでしょうか。

酒井:こんにちは、酒井です。よろしくお願いします。

酒井:自己紹介と私の研究紹介ですが、一つはゲルという物質の理解です。
高分子のネットワークが水分を含んだものをゲルというのは典型的な意味ですけど、ゲルという材料をちゃんときっちり理解したい。
それが私の一つのライフワークなので。

酒井:もう一個はゲルを使って本当に役に立つものを作ろうとしています。
そういう観点で医療を革新するということで、人工硝子体だったりとか止血剤とかいわゆる医療機器みたいなものを開発しています。

酒井:これは前半のゲルの物質としての理解のところですね。
数式が並んでいるんですけど、要はゲルの構造とゲルの硬さとか、ゲルの保水力などを関係している式なんかをきっちり理解するというか、そういうのを自分で実験で見つけてきて、しっかりとゲルの研究に取り入れていくという一つの仕事です。

酒井:もう一個の医療機器の方はですね、もちろんスキルは僕らが作ります。
僕らがこういうものを使えるんじゃないか、ということを考えて作り込んだ上で、
このお医者さん達と、彼らはどういう知見を持っていて、どういうニーズがあってということを議論しながらですね、医療機器として作り込むことをやっています。
それでも結構大変で、社会実装をしようと思った。
そこのギャップを埋めるためにベンチャーを立ち上げて、そこのCSOもやっています。

高橋:ありがとうございます。
ゲルをすごく大雑把に言うと、ひものようなものが互いに繋がって網目状の構造を作っているもの。そのくらいのくくりなんでしょうか。

酒井:かつ、スカスカであればなお良しという感じですね。
ゼリーもそうですよね。
普段食べられているゼリーの場合は、2%くらいがひもで、98%は水です。
水がほぼ98%を占めている。
そういう意味でスカスカのゲルです。

高橋:あと先ほど、多孔質とかエアロゲルみたいな話もありました。
それは水が入ってないですが、ネットワーク構造を持っている物質であれば、ゲルということでしょうか。

酒井:そうですね。
ゲルはそういう感じで、エアロゲルは気体が入っているパターン。
オルガノゲルというのは有機溶媒が入っていています。
入っているものによって名前が若干変わるんですけど、ゲルはそういう感じです。

高橋:あとゲルは、縮めて元に戻ったりとか、弾性があります。
この性質はどこから生まれてくるものなんでしょうか。

酒井:基本的には、ゲルの中には格子状のひもがあります。
例えばゼリーでも、ゴムにもあります。
実はゲルの中には高分子のひもがいっぱい入っていて、それが曲がりくねって動いているんですよ。
熱運動ですね。

酒井:網だから、引っ張ると引き伸ばすことができます。
ひもがグチャグチャしている状態はデフォルトの状態で、動きながら折り畳まれていきます。
ゲルを引っ張っているときは、ひもを引っ張っています。
ひもが元に戻ると、網全体が折りたたまれていく。
これがゲルの弾性が生まれる元です。
折りたたまれている状態のものを壁に投げつけたときの、グチャっとなった状態がデフォルトの状態です。

高橋:ひもがまっすぐピンとした状態ではなく、ランダムな状態であることが重要なんですね。

高橋:さて、今回は何でもゲルという話で始まっています。
その新しい研究領域を拓いていくことを目指して、ちょうど昨日(※2025年3月7日)、プロジェクトのキックオフシンポジウムがあったそうですね。

酒井:はい。ERATOという、JST関係のプロジェクトなんですけれども、5.5年かけてやるプロジェクトがちょうど2024年の秋から始まりました。
そのキックオフシンポジウムです。

高橋:このプロジェクトに、これまでのゲルの研究者だけではなくて、色々な分野の人たちに入ってきてもらうことで、ゲルの考え方を広げていくことにもチャレンジしていく。
そんな壮大なプロジェクトになるのでしょうか。

酒井:そうですね。
ゲルは、一般的には高分子化学の一分野にあります。
だから高分子の教科書を開くと、ゲルという章があったりなかったりするんですよ。
ない場合もあって、ない場合は、ゴムとかの章にこそっと入ってたりとか、高分子溶液の章にこそっと入っていたりする、高分子の中だと割とマイナーな存在です。
高分子学会的にはマイナー気味なんですけれども、ゲルって高分子で輝くというよりは、もっと別の分野に開いた方が、より面白いことができるんじゃないかとずっと思っていました。

酒井:作道さんたちと一緒にやりながら気づいたことがあり、その気づきがあったことに全振りしてみたら面白い展開があるんじゃないか、ということで今回のプロジェクトが立ち上がることになりました。

高橋:これまで周辺にいたゲルがメインストリームに来る。
そんな野心的な取り組みになっているっていうことなんですね。

酒井:そうですね。
ゲルの逆襲というか。
高分子の枠から飛び出してやろうくらいの気持ちです。

 

物理学の視点からゲルを視る

高橋:ありがとうございます。
作道さんと一緒に研究される中で新しい発見だったりもあったということですが、この点も含めて、作道さんから自己紹介がてらお話しいただけますでしょうか。

作道:ありがとうございます。
東京大学の酒井研究室で特任准教授をしております、作道直幸と申します。
専門はというと、もともと理論物理学で、統計力学とかソフトマター物理学とかを今やっております。

作道:酒井研究室に来てからは、異分野の知見を用いてゲルの科学を解き明かすという研究をしています。
特にこれまで一番強く関心を持っているのが、ゲルのネットワーク構造とマクロの性質をつなぐ法則とは何かというところです。

作道:酒井先生が作られたテトラペグゲルというゲルは、ミクロのネットワークの構造をいろいろ変えられるんです。
このゲルが連続でチューンできるということがわかっているので、ミクロの構造をちゃんとチューンした上で、出てきたゲルの硬さだったりとか、浸透圧だったりとか、そういうのを測ってやると、データとしてミクロとマクロがつながるんですね。
データとしてはつながるんだけど、その背後に一体どういう変化があるのかを僕がいろいろ一緒に考えてきていて、かなりこの変化が何かがわかってきたというのが現状です。
これでもうあと何年かしたら、大まかな部分はだいたいわかるというような状況に来ています。
その中で酒井先生がそんなところで満足するなよと、宿題のお題をくれたと思っているんですけど、「ERATOではゲルの科学を異分野に展開せよ」と。

作道:僕は異分野から来ていて、これまでの知見を使ってゲルの科学をやってきたのですが、方向性としてはこちなの方が比較的簡単なんですよ。
要はゲル科学に入ってきていない概念を持ち込むということなので、難しいところもあるんですけど、できます。
ところが、今度はゲルでわかったことを他の分野に持ち込もうということです。
こちらの方が僕にとって難しいと思っていて、かなりチャレンジングなんですけど、
それをしたいと思っています。

作道:僕の経歴を簡単に紹介しますと、兵庫県伊丹市出身で、修士は化学専攻にいて、博士からは物理学専攻にいました。
元々は高分子以外のことをやっていて、化学物理、量子物性、量子物理、原子核物理の研究にいきました。
そこを出た後に、ソフトマターとかゲルとかゴムの研究をやっているという経歴になります。
異分野を超えてきたということですね。

作道:ゴムやゲルの研究の前に、素粒子物理から物性物理までかなり幅広くやってきています。
手法としても、スーパーコンピュータを用いた大規模数値計算から解析計算までいろいろやってきた経験があります。
例えば素粒子物理では、いわゆるクォークの閉じ込めという、研究をやっていました。
学位論文の研究では、いわゆるボース=アインシュタイン凝縮とか、超伝導とかにかかわる話に関する研究をやっていました。
それから、エントロピー増大の法則に関わる基礎的な研究をやっていたりとか、化学物理の研究をしたりとかしていました。

作道:ゴムやゲルの研究はというと、酒井研究室に来る前に、前職はお茶の水女子大学でゴムの研究をしていました。
スーパーのポリ袋で、ちぎろうと思ってもなかなかちぎれない経験がありますよね。
この現象に関わる研究をやっていました。

作道:ちぎれないので、ゆっくり亀裂が進んでいって、あるところでキュッといくじゃないですか。
この時に、亀裂がゆっくり進むときと、亀裂が早く進むときがあるんですけど、何がきっかけで起きるのか、実はよくわかっていませんでした。
これに関して、かなりシンプルなモデルで説明がつくことを明らかにしました。
これは60年くらい前から知られている現象なんですけど、多分僕が見つけた説明で解決したんじゃないかなと思っています。

作道:2番目がゲルの弾性率の話で、ここからが酒井研での研究です。
ゲルの弾性率が何で決まっているんですかという話について、経験的には、ゴムと同じで、ゴム弾性量のエントロピー弾性で大まかに決まりますよというのが常識でした。
実はそれだけじゃなくて、かなり大きな負のエネルギー弾性という効果もあり、それを用いないとゲルの弾性率が説明できないことを明らかにする研究をしました。
実験的に明らかにした後に、僕の方で理論的にも明らかにしました。

作道:3つ目がゲルの浸透圧に関する法則です。
ゲルは固まっていくにつれて、だんだん浸透圧が下がっていくことが知られているんですけども、どういうふうに下がっていくのかというルールに関しては完全にはわかっていなかったんですね。
これに関しても、かなり明確に、これでいいだろうという法則を発見するということができました。これらが大きな仕事となります。

作道:こういう知見をもとにして、いろんな違う分野を考えて、例えば地球物理だったりとか、宇宙だったりとか、全然違う分野でもERATOの研究を展開していこうと思っています。

高橋:ありがとうございます。
理研の田中さんも色々な分野を渡ってきましたよね。

田中:私は工学の中心から生物や界面科学に進んできた人間なんですけれども、異分野を旅することでの発見とか、あるいはその先を行くポイントってありましたか?

作道:いろんなレベルであると思うんですけど、まず分野転向するときって、不安とか大変なことも当然あるんですけど、私は結構ワクワクするタイプです。
まず頭を作り変える必要があるんですよ。
しかも行く時には、それまでに積み上げたものが本当はあるんだけど、それを持ち込むと失敗すると思ってて、完全に素人気分で入る。
実際無名なので、学会とか行っても全然誰も知らないし、本当に、誰だこいつって感じで見られるわけです、はじめは。
そこから徐々に上がっていって、やがてちょっと名前が売れてくるんじゃないかという風に、素人の状態からスタートできるというのは楽しいかなと思ってやっています。

田中:ゲルっていうのがまさに異分野にまたがる概念だと思うんですけど、ゲルをきっかけに、いろんな分野どうしをつなぐような、自分もそういう新しいインターフェースになるかなと思いながら、今日は楽しみにしています。

高橋:作道さんは素粒子とか物理の王道のような研究をやっていた中から、何でゲルを選んだのかということがものすごく気になりました。
さっきの酒井さんの話ですと、ゲルは周辺領域にいるような存在という話もありました。
なぜゲルの研究を選ばれたのでしょうか?

作道:これも話すと色々とあるんですけど、量子などで研究をしてきた中で、まずゴムの研究に関わったんですよ。
ゴムをやっている中で、すごく似ている物質としてゲルがあるのは知っていたんですけど、僕はゲルの方よりゴムの方がしたかったんです。
なぜかというと、物理学者なのでシンプルなものが好きで、ゴムって単なるネットワークでシンプルです。

作道:一方、ゲルってネットワーク+溶媒ですね。
要素が2個あるからゲルは複雑だと思っていて、だからそれよりシンプルなゴムの方を研究したかったんです。
その時、たまたまあるオランダの国際会議で酒井さんと出会って、しゃべってみると、意外とゲルの方がシンプルかもしれないと思いました。
というのも、ゴムって実はすごく濃厚で、例えばそれこそゴムってひもの集団で、例えば、コンビニのお蕎麦買って来ると、お蕎麦がなんかちょっとぐちゃぐちゃになっちゃってなかなかこれ食べづらい。
買うと一緒に水がついていて、その水を蕎麦にかけるとスルッと食べれるじゃないですか。
つまり溶媒を加えるとほぐれるんですよ、ネットワークって。

作道:物理学者だから、この希薄なネットワークって、数学モデルとして考えると、真空にプカプカネットワークが浮いている、希薄なネットワークが浮いている状況になっていて、むしろ濃いネットワークよりも扱いやすいんですよ。
こっちの方がシンプルじゃんってなって、これはゲルをやるしかない。
で、ゲルに行きました。

酒井:結構すぐでしたね。
で、オランダで仲良くなって、それから2ヶ月後くらいかな。

作道:帰ってきたら話をしに来ませんかと酒井さんがおっしゃってくれて、会いに行って、それでお話をして、すぐ動いてくださいました。

酒井;うち来いよって言ってね。

作道:早いほうがいいんで。はい、この感じで酒井研にきました。

高橋:なるほど。
先ほど酒井さんが紹介してくださっていたような、色々な新しい発見をどんどんしてきている。
その中に、作道さんの理論が入ってくることで、これまでよくわからなかったゲルというものが、だんだん体系だって見えてきているっていうのが現在地というわけですね。
そこからさらに次に行こうっていう段階に来ているところなんですね。

酒井:そうですね。
当時でいうと、僕は基本実験家なので、実験をやります。
そうするとミクロのパラメータから、ある程度こういう法則がありそうだと分かってくるんですが、ほぼ教科書のモデルとは合わないんですよ。
だから教科書に書いてあるモデルって、ほぼ嘘なんですよ、ゲルの場合って。

酒井:そうすると、毎回こうではありません、ありませんっていう論文になるんです。
多分こんな感じの改訂式ですという話になる。
もう一歩踏み込んで、全部理論化できたら超かっこいいのにな、って思っていました。
僕は数式で理論化する方は得意じゃないので、一人じゃ押し切れないし、そのフラストレーションがずっとありました。

酒井:その時にたまたま偶然オランダで作道さんに出会って、この人とキャッチボールしたらすごく強くなれそうだなと思って、ちょっと僕のキャッチボール相手になってもらえませんかって話をしました。
彼と一緒にやって、やっぱりゲルことが分かるのはもちろんなんだけど、それを通してもうちょっと抽象化した、それこそ、ひもの物理だったりとか、ネットワークの物理みたいなこととの接点ができてきました。

そうすると、そこからつながるものがもっとあることがどんどん見えてきて、もうちょっと抽象化した話へ展開できないかなとずっと思っていて、ここに至ったという感じです。

高橋:貴重な経緯のお話をありがとうございます。
さて、話を少し変えますが、理論的に分かってくると、ゼリーとか、精密なゼリーって言うとあまりおいしくなさそうですけど、新しい食感であったり、食品の科学にもつながっていきそうな気持ちになってきました。

酒井:そうですね。
特に食品系だと、離水の話ですね。
ペラッとゼリーのフィルムを開けると、ちょっと水が出てきますよね。あれです。
食べるとスルッとゼリーが喉の奥の方に入ってしまうことがある。
あれが原因で、お年寄りが食べる時に誤嚥を起こすことがあるので、離水の問題は結構食品的にもクリティカルな問題です。

酒井:あれも僕らからすると、浸透圧と弾性のバランスで、ちゃんと数式に落とし込めていったりします。
食品だと、勘と経験でこうしたらああしたらなる、みたいなことが分かってたりしますよね。
僕らは、それだけだと世の中に浸透させられないので、数式を用意して、考えます。
数式で抽象化できると、それが全てのゲルが従うべきルールだったりするので、割と食品分野にも応用できるというところがあります。

ゲルっぽいことをやられている方がいるとすると、僕らの知見が使えるところまでだいぶ近づいてきている、と思いますね。

高橋:料理のやり方とかも変わってきそうですよね。

酒井:変わってきそうなので、やりたいですよ。

作道:そうですね。
例え話になると、スポーツですと、昔は根性論で、水飲まずに練習するとか、うさぎ飛びするとか、色々あったわけです。
けど、色々な科学的なデータがたまってくると、もっと合理的に強くなっていくことができるようになってきて、欧米ではかなり進んでいるんだと思うんですけど、科学を入れると、普通に根性論に勝っちゃうんですよね。

作道:多分、食品もそうなんじゃないかなと思っています。
ある種、根性論的にやっている面もあるかもしれないところを、少し新しいゲル科学を用いるだけで、ある程度のことが明らかにできるんじゃないかなと思っています。

ゲルを自在にデザインする

高橋:作道さん、ありがとうございました。
では、東京大学の増田さんからお話をお願いします。

増田:ご紹介ありがとうございます。増田と申します。
僕は酒井先生と作道先生とはちょっと所属が違うんですけれども、今、工学系研究科のバイオエンジニアリング専攻というところで教員をしております。
経歴としては、実は出身研究室が酒井先生と同じところです。
マテリアル工学専攻というところで学位をとって、その後研究員をして教員をしているという経緯になっています。

増田:僕の専門は高分子材料で、特にどっちかというと化学、ポリマーケミストリーよりのアプローチです。
ポリマーブラシといって、ヒゲが立っているような絵を描いているんですけど、ざっくり言うと、めちゃくちゃ薄いゲル、ナノメートルぐらいのゲルのようなものをきれいに合成して機能を出そうという研究をしています。
趣味とかも書いてしまったんですけど、今、料理の話もありましたが、料理も実験に似ているようなところもあるので、普通に趣味として料理は好きです。

増田:少し研究の紹介です。
化学ができると何がいいかというと、ざっくりと何でも作りたいものを何でも自在に作れるというのが化学のいいところです。
最近のゲルに関連する研究では、皮膚がいい感じに粘着するようなゲルであるとか薄いものだと医療材料用のコーティング材料とかタンパク質や細胞など、生体のものが材料とどうくっつくのかをきっちり解析するとか、そういう研究を進めています。

増田:何でもできるのはいいよということは言ったんですけど、最近はちゃんと法則がわかった上で作りたいなという気持ちが強くなってきました。
化学に色々なファクターがあるので、どう取り扱うかという点が悩ましかったのですが、最近は機械学習を使うことによって、こういう化学構造とかゲルの厚さといったパラメータを与えた時に、どういう性質になるかを予測するモデルを作っています。

増田:特に今回のスライドに示している内容で注目しているのは、水の濡れ方ですね。

 

増田:表面とか界面というのが大事なキーワードになるのですが、例えば体に馴染みやすい材料を作るには、水と馴染んでいるような材料が良いと言われています。
日常生活でも、汚れを落とすことと密接に関わっている現象です。
材料の表面に水をめちゃくちゃ塗りやすい状態から、表面が水をつるっと弾くようなところまで、しっかり予測できるようなモデルを報告しました。

高橋:増田さんの話の中でフィルムも出てきましたが、フィルムも精密にデザインできたりするものなんでしょうか。
デザインできると濡れ性が制御できたりしますか。

増田:ブラシの話を一瞬したと思うんですけど、あれは本当に精密に構成することができます。
ポリマーをつぶがつながっているようなもので書いていますが、どういうつながり方にするとか、何から作るとか、そういうのは本当に自在に設計することができます。

高橋:機械学習で大体予測もできるとお話しされていたので、配合の仕方をうまく調整すれば、色々な機能を持ったものが作れてしまうところまで来ていると言うことなんでしょうか。

増田:そうです、ざっくり言うとそんなイメージです。
化学式をインプットすると、大体こういう性質になりますよ、ということを予測してくれるとかそういうものになります。

ゲルが持つ普遍的な性質の理解から生まれる新しい研究領域

高橋:ここまで聞いていると、すでにゲルが制覇できそうなんじゃないか、ぐらいの印象を持ちました。
それをもっとシステマティックにできるようなところまで高めていくことを、皆さんで目指されているのでしょうか。

酒井:そうですね。
まだこれだと分子が残っているので、ネットワーク性のものであれば何でもいいぐらいの気持ちで考えています。
ゲルの本質というのは、ネットワークということなんですね。

酒井:例えば、増田君の例だと、分子変えると粘性が変わりますみたいな話があったりします。
一方でゲルの硬さとかって、例えば一番シンプルに言いますと、どの分子で作っても、ネットワークの形が同じだったら同じなんですよ。
ひもでネットワークができていて、ざくっとこの辺りのネットワークを立ち上げたら、その弾性率みたいなものになります。
そこまで抽象化ができてしまうと、分子じゃなくてもいいんですよ。
ネットワークだったらそういう話です。

酒井:逆にネットワークの実験で、実際にやろうと思ったら、難しい実験ってあるわけですよね。
例えば、SNSでどうしたら人の輪を断ち切れるかとかって、実験的には無理じゃないですか。
とりあえずみなさん、友達のリストから10人消してくださいみたいな。
できないわけです。
ゲルだったら、バシバシ切ることができます。
なので、ゲルの場合だと他のネットワークと同じようなネットワークを作って、実際に実験ができてしまうので、それで検証するみたいな。

そういうアプローチもあり得るかなと考えています。

高橋:それこそ新しい社会学のアプローチみたいな、本当に理論、化学の人だけじゃなくて、社会学だったりとか、多岐に渡るところまで、これからチャレンジしていこうという取り組みだということですね。

作道:地震のモデルの研究なんかも出てきています。
実は僕、何年か前にゲルに関する話で、コロナ禍だったのでオンラインで講演会をやったんですけど、聴衆が100人以上参加していました。

参加していたある学生さんからメールが来て、私の研究に興味持ってくれたので少しズームで話したら、自分は地震とかの研究がしたいですという話になりました。
で、じゃあ、うちに来なよって言いました。

地震をやりたいんだったら、ゲルを使って地震の研究できるよって言ったら、じゃあ、行きますって話になり、本当に酒井研に来てくれました。

作道:修士1年で入って、次(2025年4月)ドクターの2年になりますけど、着々と、ゲルで地震の研究をするために進めています。
ゲルの破壊とか、ゲルの弾性波の可視化とか、地震に関連するサイクルをやっていて、ようやくあと少しで本当に地震の模擬実験がゲルでできる段階にきてますね。

高橋:酒井さんの周りの人たちの求心力とか、とりあえずうちに来て実験やろうよみたいなところも凄いですね。

酒井:作道さんが、結構学生を連れてくることが多いですね。

作道:いっぱい通していますよ。
いい人が応募してきて、じゃあうちなよって言って、そういう人がたくさんいます。
今度の4月から異分野の人が研究室に3人来るんですけど、3人とも僕がずっと話してきました。

高橋:ありがとうございます。勧誘の話まで広がりましたね。(笑)

生体組織への応用

高橋:では、次は理化学研究所の田中さんお願いできますか。
田中さんはERATOのチームではなくて、僕の方で複素ゲルプロジェクトとフィーリングが合うんじゃないかなと思い、この会にお誘いしました。

田中:私は機械工学出身で、もともとNHKのロボットコンテストに出たいという野心で、高専に入ってロボットを作っていました。

 

田中:金属とかガチガチのマテリアルを使ってあまりゲルとは関係なかったと思っていたら、肌の硬さを測ってみないか、あるいは再生医療をやってみないか、という話が来るようになりました。
医工連携というのが流行った時期があるんですけれども、機械の知識というのを医療に応用して何ができるかという研究に関わりました。
そこからタンパク質だとか、あるいは細胞、あるいはバイオロジーというふうに、研究でやることが広がっていきました。

田中:最近はAIやロボットなどが身近になってきたというのもありまして、例えば実験を自動化する取り組みもしています。
新しいものだと、植物の中で起こっている代謝をロボットを使ってサンプリングして解析しようというところまで来ています。
一番ゲルに近いと思ったのは、スライド中段のところですけれども、細胞や生体組織の表面の濡れ性を測るというので、濡れたものの濡れ性を測るということに世界で初めて成功したりしています。色々なゲル材料の研究者ともご一緒させていただいています。

田中:何でもゲルだというお話があったので、ちょっと振り返ってみます。
一番昔のこの足ロボットなんですけれど、これは金属でできていると思うんですけれど、実は衝撃を吸収するところがポリウレタンエラストマーといって、多孔質の素材です。
多孔質の具合を変えると、うまく衝撃が吸収できたり、いろんな機能性を付与できるということで、あの時に精密な理論があったら助かったのにな、と思いながら話を聞いていました。

田中:スライドを進めていただいて、こういったロボットであるとか、あるいはAIを科学研究に応用したいという方を、われわれの研究所も募集しておりますので、もし興味がありましたら、どんな感じで検索していただければと思います。

なので、実はゲルの研究にかなり関わっていたんだなという風に思い出しました。

酒井:そうですね。
だいぶ、ゲルゲルしてますね。
弾性センシングはゲルだなと。
あと、細胞シートはゲル。

田中:まさに。
また今、オルガノイドとか、自己組織化というのがあるんですけれども、これは細胞自体が自己組織的にネットワークを作るという面白い現象なので、いい話を聞けたなと思っています。
色々とみなさんからも勉強させてください。

高橋:田中さんの話に肌のことが出てきましたが、ゲルの研究の中で肌の状態を理論的に捉えられると、肌へのアプローチも変わってくるのではないかと思いました。
酒井さんたちで何か取り組みを始めていたりしますか。

酒井:なるほど。
基本的には肌は、まさにあそこに書いてあるもんね、粘弾性物質。
弾性があるものは押したら戻りたくなって、若干遅れて戻ろうとします。
それを吸収するような粘性みたいなものがあるのが、粘弾性物質です。

酒井:粘弾性のある物質ってゴムとかプラスチックとかも全部そうなんですけれども、精密に粘弾性をチューニングされた物質群はまだあんまりないんです。
それがあるともっと色々な研究が進むと思うんですけれども、そういうものがなくて、そういう物質群を作る必要があります。
系統的に作って、調べて、今ってどちらかと言うと弾性の方をフォーカスとして話しているんですけれども、粘弾性まで入ったところはまだちゃんと理解ができていません。

そのものづくりのところからスタートして、精密に測ることをやっていきたいな、という話を別でちょうどしていました。

高橋:ゲルで肌っぽいものも作れてしまうんでしょうか?

酒井:そうですね。狙って作れば多分できると思います。

高橋:今でも実際ありますか?

酒井:山形大学の古川先生がやってましたよね。
赤ちゃんのほっぺたを測るんですよね。

作道:実際に赤ちゃんを連れてきて赤ちゃんのほっぺたを測ったら、その赤ちゃんのほっぺたくらいの弾性率のゲルを作れるんじゃないかと。

高橋:肌の場合だと、肌の表面の層とちょっと深いところにある真皮だったりとか、何層かに分かれています。こうしたものが作れると身体をゲルを通してより深く理解するところにも繋がるのではないかと思いました。

酒井:そうですね、その辺は3Dプリンタで一緒にゲルを作って研究をやる話をしています。
さっきの地震の話では、最終的にプレートみたいなものをプリンターで全部作ってガリガリ研究をやっていきたいです。
そういうモデルを作れるプリンター、3Dプリンターみたいなものは、ここで話したことを今後進めていく上でのキーのテクノロジーになるでしょうね。

新しいゲル科学の世界

高橋:まさに、色々な知識を融合していくことで、ゲルの世界が広がっていく、ということですね。
では、ここからはその先の世界観がどう変わっていくのか、みなさんの考えをうかがっていきたいと思います。

酒井:そうですね、これはぜひ作道さんに話してもらえると。作道さんが考えている間に、少し私から話を。
もともと高分子学会の中に高分子ゲル研究会(ゲル研究会)というのがあります。
ゲル研究会って、もともとゲルの研究をしている人からスタートをしているんですけど、例えば高分子ミセルや、ナノ集合体の研究をやっている人たちも来たりするんですよ。
増田君がやっている高分子ブラシとかナノ集合体ってゲルじゃないんですけど、結局、浸透圧とか弾性とかのバランスで決まってるから、ゲルでいいんじゃない、みたいな幅広に受け入れる文化があります。
ゲルの人たちって、やっぱりマイナーだからか知らないんですけど、ゲルらしさを探しに行くんですよ、いつも。

それってゲルだよ、大丈夫みたいな。

酒井:僕は20歳くらいからその業界にいるんですけど、まあまあ、それもゲルでいいんじゃない、これこれこうだから、みたいなところがあります。
そういうのをずっとやってきてて、割とゲルってもともと間口が広いというか、ゲルは物質でもあるんだけど、状態でもあるんですよ。
ゴムって、天然ゴムとかって、木を切ったら汁が出てきます。
この汁にゴムのもとになる高分子が含まれています。
その汁に硫黄を加えると、ゴムのもとになっている高分子どうしが架橋されて固体化する、ネットワークにするみたいな反応が起こります。
固まった時に、一般的には固化なんですけど、なんていうか、僕たちは状態を指してゲル化したと言うんですよ。
固まったことをゲル化と言っているわけですけど、結局ゲルって物質でもあって、状態でもあるんですね。
だから、ゲルってそもそも色んな意味でふわっといろんなものを包含できる概念になっていて、、喋り出すときりがないですね。

十分な時間稼いだ。(笑)

酒井:あとスライム。ドロドロのやつ。
あれも正確に言ったらゲルじゃないんですよ。
正確に言うと、あれは流れるので液体なんですね。
すごいドロドロした液体だということもできるんだけれど、1秒くらいで見るとちゃんとゲルっぽく振る舞うわけです。
そうすると、1秒くらいの範囲だったらゲルですね、とか言うことができるんですよ。
本当に本当に。

寒天なんかも、実はゲルじゃないんですよ。

高橋:ゲルじゃないんですか?

酒井:あれもずっとじーっと1年くらいかかって、形変わるんです。実は。
本当だと、あれはゲルじゃないんだけど、当然僕らはゲルだと思うわけですよ。
それは1年待てる、1年待ったらそりゃそうなんだけど、1年待てないから僕らはあれを普通にゲルだと認識してるわけですよ。
だから1年待てない人がいたとしたら、そりゃ今はゲルになっちゃうわけですね。
そんな感じで、ゲルって元々結構考え方が広くて、世界観としてはめちゃくちゃ広いんですよね。
僕らの思考の遊びでやってたことをガチでやったらどうなるかっていうのが、今回のプロジェクトの結構コアにあるのかなと思ってますけど、作道さんどうですか?

高橋:では、酒井さんが時間を作ってくれたところで作道さんからお願いします。(笑)

作道:まず一番言いたいことは、どうして今ゲル科学が熱いのかっていう話を考えたときに、これまでゲル科学の発展がある程度止まってたところから、急速に進んでいる要因の一つは、精密な合成というのがあると思っています。
増田さんもおっしゃっていましたけど、分子をきれいに設計できるだったり、きれいなネットワーク構造が作れるようになったときに、ゲルもそうですけど、ガラスとか粉体の集合とか、きれいな結晶構造を組んでいないような不均一な物質についても、かなりミクロな構造からファインチューンできるようになったというのが大きな発見な気がしていいます。

作道:そうなってくると、ミクロな構造をよくわかったまま、マクロな物質ができるようになります。
新しい世界観という意味では、ミクロな構造とマクロな物性が結びつくことによって、いろんな材料をゲルとして使えるようになるという、大きなアップデートがあるのではないかと思っています。

高橋:そこで化学メーカーや、食品メーカーの人たちがものづくりするときの考え方が変わってくるかもしれない。
そういう可能性があるかもしれないですね。

酒井:まさにそうだと思います。
やっぱり抽象化というところがポイントだと思っています。
ゲルを抽象的に捉える。

酒井:抽象化というのはぼやっとしているように聞こえるかもしれないですけど、実際はエッセンスをちゃんと抽出して、本質的な構造を理解することにつながります。
今はまさに、ゲルの本質がわかり始めた、しかもそれを抽象化できたというタイミングで、食品だったりをゲルとして解析できるし、もっと別の面を取れる可能性も出てきているところだと思います。

高橋:はい、ありがとうございます。
あっという間にもう時間が来てしまいました。

今日は新しいゲルの世界観だったりとか、これまで聴講のみなさんが思っていたゲルとはちょっと違う側面を伝えてきました。
最後に登壇者のみなさんから、どういうふうな人に入ってきてもらえるといいかみたいなところを最後皆さんから一言ずついただきつつというところと、あと田中さんに関してはこんなふうにゲルに関われたらいいかなみたいなところでコメントをもらえますでしょうか。

最初に田中さんからお話しいただきつつという順番でよろしいですかね。

田中:僕がゲル科学に期待するのは、自分が生命科学の研究をしているので、植物もまさにゲルだと思いますし、あるいは土壌というのもかなりゲルという概念が使えるのかなというふうに思っています。
なので、世界規模あるいは地球規模の現象にも何か展開があったら本当にうれしいし、我々の研究にも関連があってありがたいかなと思います。
人間とか生命という観点でいうと、ゲルを導入することで新しい機能が我々の耳に備わる、といったことがあるととても面白いなと。
非連続な生命体ができると面白いなと思いました。

高橋:田中さん、ありがとうございます。
増田さんから、こういう人にゲルの世界に入ってほしいというところがあれば、お願いしたいなと思います。

増田:ゲルの分野って作道さんみたいな物理の人もいれば、僕はどっちかというと化学でやってきた人間なんですけれども、そういう人が両方いるというのはすごくいいなと思っています。
一個の対象を作る時って、物理ってどっちかというと物質によらない法則を大事にします。
一方で、化学は物質の個性を大事にします。
結構、路線が逆なんですね。
その逆なところを超えて、物理と化学が本当に一つになるみたいな、そういう世界観がゲル科学を通して発展するといいなと思って、僕も頑張りたいなと思います。

高橋:増田さん、ありがとうございます。
では、作道さん、お願いします。

作道:ゲル研究会だと、比較的僕みたいな新参者も受け入れてくれるし、あるいはゲル研究会で何かをやって他に羽ばたいていってもOKで、新陳代謝がかなりあるっていうのがいいところだと思っています。
言いたいことは何かと言うと、人材という意味で言うと、ゲルの分野がまずオープンであって、ゲルと何らかの関連を持ってるなと思った人だったら、来てもらう。
まずディスカッションしてみて、接点を持てたら一緒にやろうという感じがします。
ゲルについて関わる上ではマインドがオープンであれば、それで十分だと思います。

高橋:最後に酒井さんから、人文学や社会学など、理学、工学とは少し違う観点から、こういった人たちとも関われると、ゲルの概念が広がるのではないかというところでお話しをいただいて、締めたいと思います。

酒井:おお、難しいフリですね。
例えば、人文社会学的にも、体系化だったりとか、パラメータだったりとか、多分そういう分野も、工学的な側面が入ってきていることが結構多いかなと思います。
工学部でも、実際そういうことをやると、人文社会系の人たちと話をすることもあって、そういう枠のほうが増えてきています。
いろんな構造って、概ねネットワーク、だから、結構共通言語があるんですね。
なので、そういう方々も多分、こういう抽象化したゲルっていうところだったら入ってくれると思うし、多分同じ言葉でしゃべれると思う。
そういう人に入ってみてほしいと思っています。

酒井:企業の方もたくさんいらっしゃっていると思うんですけど、たぶんゲルやっている会社ってあんまりないんですよ。
食品系の会社でも結構あるんですけど、ただ、とある部分の誰かがゲルをやっていることって結構よくあって、結構困られている人が多いんです。
なぜならば、化学系だからとりあえずお前ゲルやれるやろうとやらされている人が結構多いです。
それは無理なんですよ。結構難しいです。

それこそ増田君が言っていたみたいに、化学と物理と両方ある程度なんとなくゲルのことをわかっていた方がいいという方。
ぜひそういう方々にゲルのところに来ていただいて、コミュニケーションをしていただいて、ぜひゲルの知見を持って帰っていただきたいというのを本当に思っています。
ゲルらしさは常に見つけていくので、ぜひ怖がらずにゲルのところに来ていただければと思います。

高橋:はい、ありがとうございました。
今日お話しにあった中で、これまで世界的にも発見されていなかったことが、日本で明らかになってきていることがわかりました。
そういう場で活躍されている方と、すぐに一緒にやれるという状況にあって、すごくいい時期なのかなと感じました。
今日会場に集まっている皆さんとも一緒に、これから一緒に新しいゲルの研究分野であったりとか、世界観を作っていくところを日本からもっと発信していけるといいのかなと思います。

ぜひ今日聞いていただいたみなさんはゲルの仲間だと思いますので、一緒に研究を作っていきましょう。

今日はお時間をいただきましてありがとうございました。
登壇者のみなさんに拍手をお願いいたします。

ありがとうございました。


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